Aaveは中央集権的な仲介者を排除し、スマートコントラクトによって暗号資産の貸借を自動化した「世界最大級の分散型レンディングサービス」です。
この記事では、Aaveの基本的な仕組みから、安全に利用するために必要な知識を初心者にも分かるように解説します。
- Aaveとは？
- Aaveの貸し借りの仕組み
- 利用時の注意点
最終更新日：2025-12-24
Aaveとは？
Aaveは、複数のブロックチェーン上で稼働する「レンディング（暗号資産の貸し借り）」サービスです。
Ethereumネットワークを利用した「Coreマーケット」をはじめ、Base、Arbitrum、Avalanche、BNB Chain、Polygonなど、複数のネットワークでサービスを提供しています。
2025年12月時点の現行バージョンはV3ですが、2025年11月には次期バージョンのV4がテストネットに公開さています。
Aaveの貸し借りの仕組み
Aaveの貸し借りの仕組みは、P2Pのように個人を紐づけるのではなく、貸し手から暗号資産を供給してもらい、「流動性プール」と呼ばれるスマートコントラクトに集約しています。
そして、借り手から担保資産を預かると、資産価値に応じた数量が流動性プールから貸し出されます。
借り手は、借りている期間中は金利を支払い、金利の一部は資産を提供した貸し手に還元されます。
Aaveの特徴
Aaveの主な特徴は次のとおり。
- ノンカストディアル（非預託型）
- Aaveでは資産の管理権は常にユーザーが保持（スマートコントラクトを通じて流動性を提供）
- 仲介者なし
- 従来の銀行と異なり、貸し借りの条件はスマートコントラクトで制御
- 透明性
- 全ての取引、金利計算、プールの資金状況はオンチェーンで公開されており、誰でも検証可能
- パーミッションレス（利用申請不要）
- 居住地や属性に関わらず、Web3ウォレット（MetaMaskなど）を接続するだけで誰でもすぐに利用可能
貸し手：利息を得る仕組み
Aaveでは資産を提供すると預け入れた数量に応じた利息を得ることができます。
aTokenの仕組み
貸し手は、資産を供給すると、供給した資産と1：1でペグ（固定）された「aToken」が発行されます。
例えば、USDCを供給するとaUSDCを受け取ります。
利息はこのaTokenに分配され、自分の所有しているウォレット内のトークン残高が直に増加します。
借り手が支払う利息に加え、Aave内で発生する「フラッシュローン」の手数料の一部も供給者に分配されます。
変動金利の仕組み
金利はプールの「利用率（Utilization Rate）」に応じて、動的に決定されます。
利用率は、預けられた暗号資産のうち「どれだけ借りられているか」を表す指標です。
利用率が高いほど、借り手が多く、貸し出せる資産が少ない（流動性が低い）状態になります。
この利用率が一定のしきい値（Optimal Point）を超えると、「借りられすぎ」というアルゴリズムが発動します。
- 借り手のコスト（金利）が急上昇
- 貸し手の利回りも上昇
つまり、しきい値を超えた瞬間に借入コストを大きくすることで、「返す・借りない」、「預ける」を促し、借りられすぎを元に戻す設計になっています。
借り手：過剰担保とリスク管理
Aaveで貸すだけでなく、借入を行うこともできます。
その場合、借りる金額以上の資産を担保として提供する必要があります。
担保係数（LTV）と清算しきい値
借り手は、Aaveを利用してLTVまで資金を借りることができます。
LTV（Loan to Value）は、担保資産に対して最大で何%まで借りられるかを示す指標です。
例えば、LTVが75％の場合、1 ETH相当を担保として預けた場合、最大0.75 ETH相当まで借りることができます。
ただし、市場が急変した場合、担保として預かっていた暗号資産の価値も下がるため、貸出側はリスクを背負うことになります。
このリスクを回避するために「清算しきい値」と「ヘルスファクター」があります。
清算しきい値（Liquidation Threshold）は、担保価値から清算判断を見積もるための割合です。
ヘルスファクター（Health Factor）は、借入状況の健全性を表すスコアで、1以下になると担保が清算対象になります。以下の計算式で表せます。
ヘルスファクター = (担保価値 × 清算しきい値) / 負債価値
清算対象となる例
- 前提
- ETHを $10,000 分預けて、USDCを $7,000 借りる
- 担保の清算しきい値は 80%（0.80）
10,000 × 0.80 / 7,000 = 1.142
この時のヘルスファクターは1.142で、1超のため清算対象にはならない。
その後、市場が急変してETHの評価額が $10,000 → $7,500 に低下してしまった。
7,500 × 0.80 / 7,000 = 0.857
ヘルスファクターは0.857で、1以下のため担保が清算対象になる。
清算可能な担保数量（一部または全額）は、ヘルスファクターとポジションサイズによって異なる。
フラッシュローン（Flash Loans）：DeFi固有の機能
フラッシュローンは、ブロックチェーンの「原子性（Atomicity）」を利用した、DeFi特有の機能です。
原子性とは、「一連の処理がすべて実行される」か「一つも実行されない」かのどちらかの状態を指します。
- 仕組み
- 1つのトランザクション（取引）の中で「借入」→「処理」→「返済」を完結させることを条件に、無担保で巨額の資金を借りることが可能
- 安全性
- トランザクションの終了時点で返済が確認できない場合、ネットワーク側で取引全体がロールバック（取り消し）されるため、貸し倒れリスクがない
- ユースケース
- 裁定取引（アービトラージ）
- 担保資産の借り換えなど
Aaveを利用するための4ステップ
「まずは試してみたい」という方は、以下の手順で進めることができます。
- ウォレットの準備：MetaMaskやCoinbase Walletをインストールし、少額の暗号資産（USDCなど）を用意
- ネットワークの選択：最初はPolygonやArbitrumといったネットワークを選択（ガス代が安い）
- 資産の供給：Aaveにウォレットを接続し、保有している資産を供給（Supply）する
- 貸出確認：供給後、「aToken」を確認
主なリスク
Aaveを利用する際には、下記のリスクを理解しておく必要があります。
- サービス終了リスク
-
サービスが突然終了した場合、貸し手・借り手は、一部または全資産を失う可能性があります。
- スマートコントラクトリスク
-
Aaveは複数の専門機関による監査を受けていますが、コードの脆弱性やバグにより、貸し手・借り手は、一部または全資産を失う可能性があります。
- 流動性リスク
-
流動性プールの利用率が100%に達すると、貸し手は一時的に預けた資金が引き出せなくなる可能性があります。
- オラクルリスク
-
価格参照元（Chainlink等）の不具合により、借り手は不当な清算を受ける可能性があります。
- 清算リスク
-
借り手は、市場が急変し担保不足となった場合、預けた資産の一部または全額が清算される可能性があります。
まとめ
Aaveは、透明性とプログラムによる自己完結性を追求した「分散型レンディングサービス」です。
ユーザーが直接Aaveとやり取りすることで、仲介コストを排除し、従来の金融では不可能だった柔軟な資産運用が可能になっています。
レイヤー2ネットワークを利用して、少額のステーブルコイン（USDC等）を使えば、ガス代を抑えた利用が可能です。
※本記事はAave公式ドキュメントを基にした情報提供であり、特定の投資を推奨するものではありません。
