プレスリリースのポイント
- Brevisの「Pico Prism」がEthereumメインネットで99.6%の証明カバレッジを達成
- GPUコストを50%削減し、リアルタイム証明の経済的実現を達成
- Ethereumスケーリングにおける根本課題を数学的証明で解消
Brevis「Pico Prism」がリアルタイム証明で業界初の成果を達成
【シンガポール 2025年10月15日】
Brevisは、Pico Prism zkVMが、Ethereumメインネットブロック(ガスリミット4,500万)に対して、世界で初めて99.6%(12秒未満)の証明カバレッジおよび96.8%(10秒未満)のリアルタイム証明カバレッジを達成したことを発表しました。
この成果により、Brevisは研究段階から実運用レベルのインフラ提供へと移行し、Ethereumのベースレイヤーゼロ知識検証への移行における大きなボトルネックを突破しました。
GPUハードウェアコストを50%削減し、リアルタイム証明の広範な導入を経済的に実現可能にしました。
Pico Prismの技術
Pico Prismは、既存のソリューションと比較して全ての主要指標で大幅な改善を実現しています。
- 現在の4,500万ガスブロックに対して99.6%(12秒未満)、および3,600万ガスブロックに対して96.8%(10秒未満)の証明カバレッジを達成。競合ソリューションの3,600万ガスブロックにおけるカバレッジ(40.9%)を大きく上回る結果となった
- ハードウェアコストは12.8万ドルで、競合の25.6万ドルに比べ半分
- 平均証明時間は、4,500万ガスブロックで6.9秒、3,600万ガスブロックで6.04秒と、競合の10.3秒を大幅に短縮
- 同等性能を実現するのに必要なGPU数も、RTX 4090を160基使用する構成に対し、RTX 5090を64基に削減
- 速度とコスト効率を総合したパフォーマンス指標では、3.4倍の優位性を示した
BrevisのCEO兼共同創設者であるMo Dong氏は、次のようにコメントしています。
「数字がすべてを物語っています。私たちは、現在イーサリアムが実際に生み出している負荷を処理できるインフラを構築しました。これは、高速なパフォーマンスによって経済的効率性を実現し、リアルタイムでの証明を本番環境で実用化することを可能にするものです。」
この性能改善の鍵は、単一マシンでの処理を見直し、分散型マルチGPUクラスターに移行した新設計にあります。計算負荷をGPUに、セットアップ処理をCPUに最適化することで、並列化と高速化を実現しました。
Ethereumスケーリングの根本的課題とPico Prismの解決策
Ethereumでは、Uniswapなどで1件の取引が行われるたびに、世界中の80万以上のバリデーターが同一計算を再実行しています。これは大きな計算の無駄を生み、スケーラビリティの制約となっていました。
Pico Prismは、計算を繰り返すのではなく、数学的証明で検証を行う方式により、この問題を根本的に解消します。
これにより、数十万のバリデーターが同じ処理を再実行する必要はなく、1つのプローバーが作成した証明を他の参加者が数ミリ秒で検証するだけで済みます。
イーサリアムのスケーリングの未来は、zkEVM がイーサリアムのブロックをリアルタイムで証明できる能力に大きく依存しています。
イーサリアムは最終的に、コンセンサス層での署名集約から、クライアント側での証明によるオンチェーン・プライバシーまで、スタック全体でZK証明を採用する計画を掲げていおり、その第一歩となるのが、L1 zkEVMの統合です。
イーサリアム財団は2025年7月のロードマップで、明確な目標を示しています。
すなわち、「カバレッジ99%」「10秒未満の証明」「10万ドル以下のハードウェア」「10kW未満の電力消費によるホーム証明環境の実現」であり、これらは高い可用性と検閲耐性を維持するための条件です。
Pico Prism の登場により、イーサリアム L1 zkEVM 統合への道筋はこれまでになく明確になりました。現在もリアルタイム証明(10秒未満)という最新目標まであと2.2ポイントの差があるものの、Brevisはこの壁を超えるための新機能を順次導入しています。
Pico Prismを利用するメリット
Pico Prismが検証処理を担うことで、従来の制約が大幅に緩和されます。
- ブロックあたりのガス上限を、現行の4,500万を超えて安全に拡大できます
- 平均トランザクション手数料が大幅に低下します
- 複雑な DeFi 取引も経済的に実行可能になります
- スマートコントラクトが、高額なガスコストをかけずに過去データへアクセスできるようになります
- ユーザー負担を増やすことなく、プライバシー保護型プロトコルを展開できるようになります
バリデータとネットワーク健全性への影響
- ゲーミング PC を使わず、一般的なノート PC でもホームステーキングが可能になります
- 参加障壁が下がることで、ネットワークの分散性が向上します
- ハードウェアの集中を招かずに、トランザクション処理能力が大幅に向上します
開発者にとってのメリット
さらに、開発者はオフチェーンの膨大な計算リソースを活用しながら、Ethereum L1 と同等の信頼性を保ったまま dApp を構築できるようになります。
すでにBrevisのインフラ上では、Ethereumの「制約なき未来」を先取りする主要プロトコルが稼働しています。
PancakeSwap の高度なトレーディングフック、Usual のトラストレス報酬分配、そしてFraxのクロスチェーン検証システムはいずれも、この同じ証明技術の上で動作しています。
Brevisについて
Brevisは、ゼロ知識証明技術を活用し、オンチェーン上の負荷を軽減しつつ、既存のスマートコントラクトブロックチェーンに無限の計算能力をもたらすオフチェーン計算エンジンを提供する企業です。
L1の信頼モデルを維持しながら、Web3アプリケーションがシームレスにスケールできるよう支援しています。

Cryptide AIがポイントを解説
ここからは、Cryptide AIが分かりにくい部分をピックアップして解説します!
分かりにくい用語などを解説
- ガスリミット4,500万とは?
- Ethereumで生成する1ブロックあたり、最大で4,500万ガス(手数料)分までの処理を入れてもいいという上限のことを指しています。
- 「証明カバレッジ」と「リアルタイム証明カバレッジ」とは?
- 証明カバレッジとは、「どのくらいのブロックをどれくらいのスピードで正しいと検証できたか」ということ。リアルタイム証明カバレッジは、それをどれだけ、遅延なく(リアルタイム)で検証できたかということ。
- ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof, ZK, ZKP, ZK証明)とは?
- ブロックの中身を見せずに「正しいこと」を証明する技術。数学的に構築されており、間違った証明を作ることはほぼ不可能。
- zkEVMとは?
- Ethereum Virtual Machineをゼロ知識証明ベースで再現したもの。Ethereumのプログラムを安全かつ効率的に処理する環境。
気になる点をピックアップ解説
「このニュースは何がすごいのか?」という部分をピックアップ解説します。
Ethereumでは1ブロック約12秒で生成されています。「証明(ブロックの内容が正しいかを検証する作業)」は、ブロック作成後に実行されます。もし、証明に12秒以上かかると、次のブロックが生成されてしまい、証明が追い付かなくなってしまいます(永遠に遅れ続ける)。この遅延が積み重なると、ブロックをリアルタイムで検証できないため、実用化ができないという問題が起きます。
それが、今回の「Pico Prism」という仕組みを使うことで、「99.6%の取引を12秒以内に証明できる(証明カバレッジ)」ようになり、「96.8%の取引は10秒以内にリアルタイムで処理可能(リアルタイム証明カバレッジ)」になりました。これで、証明が遅れ続けるのを防ぐことができます。
さらに、GPUコストも半分に削減されたことで「速く、安く」利用でき、実用化に近づいたというニュースです。
総合的なまとめ
Pico Prismはゼロ知識証明を使い、Ethereumの大きな処理負荷を軽くしました。GPUコストを抑えつつリアルタイム処理を実現した点が特徴です。これによりEthereumのスケーリング問題解消が一歩進み、開発者や利用者にとっても使いやすい環境が整いつつあります。
参考URL: