プレスリリースのポイント
- GPUではZK証明の最終処理が加速できない
- CPUベースの構造が今後の鍵に
- ZK技術全体の設計思想が転換点に
GPUの限界が明らかに
中国・仏山市で行われたAntChain OpenLabsとZEROBASEによる共同検証で、GPUによるゼロ知識証明(ZK)の加速に重大な限界があることが分かりました。Groth16という広く使われているZKプロトコルにおいて、処理工程の一部はGPUによって大幅に高速化されるものの、最後の重要ステップ「r1cs.Solve」は並列処理ができず、GPUの性能が活かせないことが確認されました。
Groth16での具体的な課題
Groth16という広く使われているZKプロトコルでは、MSMやNTTなど一部の工程はGPUで大幅に高速化されますが、最終ステップ「r1cs.Solve」は並列化できず、GPUの恩恵を受けられないことが明らかになりました。
GPUアーキテクチャが進化する中で、この最終ステップが全体性能の主な制約となる可能性があると分析されています。
これから求められる技術的シフト
単純にGPUのコア数を増やせばZKの処理が高速化されるというこれまでの常識に疑問が投げかけられました。今後は、アルゴリズム単位での並列化や、柔軟なマルチコアCPUの活用、さらにGPUとCPUを組み合わせたハイブリッド型アーキテクチャの採用が求められます。
この変化は、回路DSL設計からプロバーアーキテクチャに至るまで、ハードウェア戦略だけでなくZKスタック全体に深い影響を与えるとされています。
ZEROBASEの新たな戦略と提言
この検証を通じてZEROBASEは、ハードウェアに依存しすぎないアーキテクチャ設計の必要性を強調しています。特に、実際の利用環境に耐えうるCPU最適化型のZKプロバー(証明生成器)の研究開発を加速する方針です。
AntChainとの連携のような、透明性のあるベンチマークと組織間協力が、より効率的かつスケーラブルなZKエコシステムへの道だとZEROBASEは考えています。
今後のZK技術に与える影響
ZEROBASEは、分散型金融(DeFi)の可能性を最大限に引き出すことを使命とするインフラ分野の先駆者です。ハードウェア性能に依存せず、柔軟かつ拡張性のある設計思想が求められます。開発者や研究者、そしてDeFi事業者にとっても、より現実的なアプローチへの転換が迫られる局面に差し掛かっています。
まとめ
AntChain OpenLabsとZEROBASEの共同研究により、GPUだけではZK処理のすべてを加速できないことが実証されました。
Groth16プロトコルにおける「r1cs.Solve」は並列処理に向かず、GPUの性能を活かせないため、従来の“GPU=高速化”という常識に疑問が投げかけられました。今後は、CPUとのハイブリッド構成やアルゴリズムレベルでの再設計が重要になります。ZEROBASEはこうした技術転換を見据え、より実用的なZKアーキテクチャの構築を進めています。
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